こんばんは、あすぴです。
前回の記事は、「重度訪問介護とは?|ALS家族が語る体験記〜ALS患者と在宅療養〜」というテーマでお届けしました。
今回は、ウチくる看護1周年記念企画第3弾としまして、ALS患者さん及びご家族と訪問看護の関わりについて詳しく解説していきます。
ALS患者さんだけでなく、長期的に在宅療養をする利用者さんとの関わりにおいて参考にしていただける内容になっています。
前回に引き続き、ALS患者のご家族であるMさんへのインタビューとともにお送りしますので、ぜひ日々の業務にお役立てください。
ALS患者に関わる在宅チームとは?
ALS患者さんに関わる在宅チームは、どのような職種の人たちですか?
僕たちALS患者、家族には様々な職種の方が関わってくれました。
ALSの在宅療養では、このような人が関わっています。
難病の患者さんが在宅療養をする場合には、多くの医療介護福祉従事者が関わることになります。
病院という1つの場所に集合しているチームとは異なり、在宅チームは事業所の物理的な違いだけでなく持っている資格や事業所の考え方がそれぞれ違います。
お互いの違いを理解し、利用者さんという共通の存在を軸に情報共有や方針の統一をしていく必要があります。
多くの関係者の中でも、ある訪問看護の看護師さんにはとても支えられました。今回は、妻に関わってくれた訪問看護師さんとの思い出を含めてお話しさせてください!
ぜひ、聞かせていただきたいです!
ALS患者のご家族が語る訪問看護との関わり
ALS患者であるYさんと支援にあたった訪問看護との関わりを教えてください。
関わってくれた訪問看護ステーションの所長さんは、とても印象的でした。その所長さんは今でも時々連絡をくれて、僕たち家族を気にかけてくれています。
人工呼吸器をつけた妻が退院して在宅療養を始め、訪問看護のサービスが開始されました。
支援にあたってくださった訪問看護ステーションの所長さんは、はっきりとした言葉で伝えてくれる方でした。
その所長さんに言われた言葉の中で、とても印象に残っているものがあります。
「あなたの奥さん、死んじゃうんだからね。」
最初この言葉を聞いた時、とても衝撃を受けたことを覚えています。
ALSの診断を受けたときに医者から聞いた「あなたの奥さんは呼吸器をつけないと半年後に亡くなります。」という言葉を思い出しました。
「妻が死ぬ、そんなことはわかってる。」そう思いながらも、意識が薄れていたことも実感しました。
そしてこの言葉は、在宅療養の中で何度も繰り返されました。
生活が安定してきて気持ちが緩んでいる時に、初心に返る気持ちでした。
きっと、「初心を忘れないでね。」という意味だったと僕は解釈しています。
訪問看護には、毎日3時間の訪問をしてもらっていました。
訪問看護の看護師さんが来る前に、ヘルパーが文字盤を読み取りその日にお願いしたいケアを一覧にメモしていました。
いつも妻の要望に応えて、丁寧にケアをしてくれていました。
また、気管カニューレ及び人工呼吸器を装着している場合に起こり得る危険についても教えていただきました。
近所の散歩や旅行など、その場にあったシチュエーションを想定して危険なことやその対応方法を考えてくれました。
外出先で受診する必要がある場合に備えて病院を探したり紹介状を手配してくれたり、必要物品を一緒に確認してくれて助かりました。
ALS患者と訪問看護との関わりの実際
訪問看護と関わりの中で、「助かった」と感じることや「こうして欲しかった」と感じたことはありますか?
訪問看護には、たくさん助けられたことがありました。その反面で、うまくいかないこともありました。
訪問看護の支援で「助かった」と感じたこと
- 小さな身体の変化に気付いてくれる
- 長期療養のために医療的観点からアドバイスをもらえる
- 1日数時間でも自分が休むことができた
小さな身体の変化に気付く
訪問看護の看護師さんは、妻の些細な状態変化に気付いてくれました。
家族が身体症状の小さな変化に気がついても、どうしてその症状が出ているのかという原因に考えが及ばないことがあります。
妻の在宅療養の中で体調の波はありましたが、看護師さんがいち早く状態変化をキャッチしてくれたので、早期に対応でき大事に至らずに過ごすことができたと思います。
医療的観点からアドバイスをもらう
僕やヘルパーさんは、医療的な視点でアドバイスをもらっていました。
妻の在宅療養を続けていくために必要な知識を、噛み砕いて教えてもらったことも助かりました。
ヘルパーさんの仕事内容は、基本的に医療的なケアはできません。
しかし、ヘルパーさんの可能な範囲で対応できる内容に落とし込んで、医療介護で連携してくれたのは良かったと思います。
訪問看護の利用時間は休憩できる時間になる
看護師さんが訪問してくれている間は、全てお任せすることができました。
その数時間は、僕にとって貴重な休息時間でもありました。
寝不足で疲れている時に、「ここは私たちに任せて、一息ついてきて!」と声をかけてくれたのを思い出します。
任せられる存在というのは、ありがたいものです。
こうして妻だけでなく家族の健康も気使ってもらったことは、在宅療養を続ける上でとても助かったと感じます。
訪問看護の支援で「こうして欲しかった」と感じたこと
- 自分の考えを押しつけないで欲しいと感じた
- ヘルパーさんの立ち位置、役割を理解して欲しかった
- 高圧的な雰囲気を出す看護師さんは関わりにくかった
自分の考えを押し付けないで欲しい
訪問看護師さんの中には、「こうしなければいけない」「こうあるべき」というアドバイスをくださる方もいました。
しかし、僕たちには僕たちの生活があり、病院のようには時間通りにいかなかったり環境が整っていなかったりすることもあります。
介護の中に僕たち家族の生活があるのではなく、僕たちの生活の中に介護があるためです。
在宅では「こうあるべき」が通用しないことはよくあります。
ぜひ利用者の立場に立って、柔軟に療養生活について一緒に考えてもらえたらと思います。
他職種の立ち位置、役割を理解して欲しい
ヘルパーさんにご指摘をくださることもありましたが、実はこれがとても困ります。
なぜなら、ヘルパーさんは経験値や学歴がそれぞれ異なるからです。
特に重度訪問介護では、介護未経験のヘルパーさんや社会人経験のない大学生が携わることがあります。
できることとできないことも、個々の能力に合わせたものにしていました。
なかなかヘルパーさん一人一人を把握することは難しいと思いますので、サービス責任者を通してご相談いただいたり、お互いケアが可能な範囲を共有しながら連携を図って行けると良かったと考えます。
高圧的な雰囲気では相談しにくい
看護師さんは、家族やヘルパーさんからするととても頼りになる存在です。
でも、看護師さんによっては相談しにくいと感じることもあります。
「障害者だから特別扱いをしてほしい」とか、「かわいそうだから優しくしてほしい」とか思っている訳ではありません。
障害がある、人工呼吸器を装着している、それでも家族と過ごしたい。
人工呼吸器をつけなかったら見られなかった子供の成長や、当たり前の家族の日常を見守りたい。
それを叶えるために、家族の力だけでは難しい。
僕たちにとってはヘルパーさんも、看護師さんも、お医者さんも必要です。
お互いが相談しやすい関係性があってこその在宅療養だと思います。
僕からはぜひ、職種に順位をつけないで、家族も介護チームも医療チームもお互いを支え合える関係であることをお願いしたいです。
ALS患者へ現代の訪問看護ができることとは?
在宅療養をする難病の利用者さんに対し、現代の訪問看護ができる関わりとはどのようなものでしょうか。
今は制度が整っていなかった当時とは異なり、訪問看護は重要なポジションだと感じています。
チームを支える存在になる
訪問看護は在宅療養者に関わる医療、介護チームを支える存在になることができます。
看護師さんは医療、介護の両方の分野で知識が広いからです。
お医者さんや看護師さんのような医療チームは、療養者の健康維持を支えています。
これは在宅療養者の「生きる」の部分にあたります。
家族がヘルパーさんのような介護チームは、療養者の希望にあった在宅生活を目指します。
これは、在宅療養者を「活かす」の部分にあたります。
「生きる」ことと「活かす」こと、どちらも揃って「生活」になります。
ぜひ介護と医療の架け橋となり、「生活」を支援していただけるとありがたいです。
本人や家族の覚悟を決める助けをする
医療機器を使用する身体状況で在宅療養をするというのは、本人や家族に責任が伴います。
病院ではなく家ですから、何があってもおかしくありません。
例えばヘルパーさんが支援中に、気管カニューレが抜けてしまったとします。
ヘルパーさんはご家族や医療者と違って、気管カニューレ抜去時の再挿入ができません。
僕は関わってくれる全てのヘルパーさんに、夫の立場として、家族不在時の気管カニューレの事故抜去があったには再挿入を試みてほしいとお願いしていました。
それで万が一起こったミスなどは一切の責任を僕が持つと誓約書を書きました。
ここまでのことを勧めるわけではありません。
ただ、利用者の家族はそこまでの覚悟が必要であるということです。
当時はALS患者が在宅療養するための制度が整っておらず、僕が一人一人のヘルパーさんに吸引指導や緊急時の対応を伝えてきました。
あの頃、訪問看護師さんと一緒にヘルパーさんへの実技指導や緊急時の対応を相談できていたら、もっと心強かっただろうと思います。
ALSを始め難病を抱える方に関わる訪問看護師さんには、リスクを背負う家族の支援をしてもらいたいと考えます。
そして、日々のケアや緊急時の対策を考える手助けをして欲しいです。
近い将来に起こり得ること、もっと先の将来に起こり得ることを家族に伝える
僕は、妻に関わってくれた訪問看護ステーションの所長さんから、近い将来に起こり得ることと、もっと先の将来に起こる可能性があることを常々言われていました。
だから、その先にあるいくつのも道をイメージすることができたし、備えもできました。
現在重度訪問介護事業所として他の利用者さんに関わり、現状のみの解決になっていることが多く感じます。
例えば、現在は筆談でコミュニケーションを取っている利用者さんも、病気の進行により筆談はできなくなるでしょう。
もっと先を見据えて、視線入力などのコミュニケーションツールは動くうちから練習しなければ間に合いません。
「今は大丈夫」と1日1日を過ごすうちに、状態はいつの間にか変わっているものです。
訪問看護師さんには、利用者さんの将来に起こり得る困難やトラブルを予測して、何度でも伝えていって欲しいと考えています。
訪問看護の皆さんへ
Mさん、訪問看護の皆さんに一言お願いします!
自分は野球が好きなので、野球に例えるなら
利用者はチームの顔となるスーパースター
主たる介護者は監督
看護師さんはヘッドコーチ
ヘルパーさんはともに戦う選手
ですね。
どうぞこれからも、よろしくお願いします。
Mさん、ありがとうございました!
最後に、MさんのTwitterアカウントのご紹介をお願いします!
なご実ケアサービス@ALSのTwitterアカウントでは、重度訪問介護の情報発信を行いますので、フォローお願いします!
DM、リプでのご質問もお気軽にどうぞ♪
遠方の方はオンラインでのご相談もできますよ〜。
まとめ
今回は、「ALS患者と訪問看護|ALS家族が語る体験談〜ALSと在宅医療介護チーム〜」をテーマに、ALS患者さんと訪問看護の関わりについて解説しました。
現在、難病を抱える利用者さんへの訪問看護を行っている訪問看護師さんだけでなく、今後難病の利用者さんを受け入れる訪問看護事業所の皆様も、ぜひ考え方の一つとして現場で活用していただけるとありがたいです!
次回は、「ALSの家族へのメッセージ|ALS家族が語る体験談〜在宅で暮らすALS患者と家族の方へ〜」をテーマに、難病を抱える患者さんを介護するご家族のリアルな心情をお伝えします!
ぜひ、お楽しみに。
コメント