利用者さんは在宅でターミナル期を過ごし、入院した当日に亡くなりました。
その場合には訪問看護のターミナルケア療養費を算定できますか?
こんばんは、あすぴです。
上記のような質問をいただきました。
平成29年の厚生労働省の調べによると、訪問看護での訪問看護ターミナルケア療養費の算定件数は年々増加傾向にあります。
訪問看護に勤めて、在宅看取りを経験した看護師さんは少なくないと思います。
今回は、ターミナル期における訪問看護の利用料である「訪問看護ターミナルケア療養費」について詳しく解説していきます。
訪問看護ターミナルケア療養費とは?
訪問看護ターミナルケア療養費とは、医療保険での利用の際に出てくる名称です。
大きな括りで説明すると、訪問看護ターミナルケア療養費は、以下の図のように訪問看護基本療養費、訪問看護管理療養費及び加算とは別の枠で構成されています。
また、介護保険での利用の場合には「ターミナルケア加算」という名称です。
訪問看護利用時に、医療保険と介護保険の両方を利用していた場合には、最後に利用した保険でターミナルケアの算定を行います。
訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件とは?
訪問看護ターミナルケア療養費は、以下の条件を満たすことで算定することができます。
算定するのは、最終訪問日(死亡日当日含む)です。
①死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に2回以上、訪問看護基本療養費を算定していること
訪問看護基本療養費は1日につき1回しか算定できません。
つまり、15日間で2日以上訪問している必要があるということです。
②主治医との連携の下に、訪問看護におけるターミナルケアを計画、実施していること
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の内容を踏まえてACP(アドバンスケアプランニング)を行い対応していく必要があります。
③支援体制(24時間対応体制、緊急時の連絡先など)についてご利用者様及びそのご家族等に対して説明を行い、同意を得ていること
④死亡場所と死亡時刻を訪問看護記録に記載すること
例えば緊急入院先での死亡確認でも、在宅以外で死亡してもターミナルケアを実施したあと24時間以内であれば訪問看護ターミナルケア療養費を算定できます。
「ターミナルケアを実施したあと」というと、搬送の当日に訪問していなければいけないようなニュアンスですが、そういうわけではありません。
ターミナルケアを計画して14日に2回以上、つまり週1回以上の定期的な訪問をしていることが「ターミナルケアの実施」です。
訪問看護ターミナルケア療養費の診療報酬は?
訪問看護ターミナルケア療養費は、1と2に分けられます。
それぞれの料金も以下のように異なります。
訪問看護ターミナルケア療養費1
診療報酬 25,000円
訪問看護ターミナルケア療養費1は、在宅で死亡したご利用者様が対象となります。
ターミナルケア後、24時間以内に病院や特養などで死亡した場合も算定できます。
施設側が看取り介護加算などを算定している場合には、算定できません。
訪問看護ターミナルケア療養費2
診療報酬 10,000円
訪問看護ターミナルケア療養費2は、特養などで死亡したご利用者様が対象となります。
施設側が看取り介護加算などを算定している場合に算定します。
介護保険のターミナルケア加算の場合
介護保険のターミナルケア加算の場合には、医療保険の訪問看護ターミナルケア療養費で示した算定条件に、「24時間連絡体制の確保」が追加された内容です。
介護報酬は、死亡月に2,000単位の算定を行います。
算定は月毎になり、最終訪問と死亡日が月をまたぐ場合には、ターミナルケア加算のみ死亡月に算定します。
医療保険の訪問看護ターミナルケア療養費は最終訪問日に算定します。
これも相違点のため、算定時には注意しましょう。
24時間連絡対応をしていない事業所の場合は?
介護保険でのターミナルケア加算は、24時間の連絡体制の確保が必要です。
しかし、医療保険での訪問看護ターミナルケア療養費の場合には算定要件に含まれません。
ただし、ターミナルケアの支援体制についてはご利用者様およびご家族に説明し同意を得る必要があります。
具体的には、事業所の連絡担当者の氏名、連絡先電話番号、緊急時の注意事項などが該当します。
死後の処置(エンゼルケア)費用とは?
看取りを行う訪問看護ステーションでは、ターミナルケア療養費以外に自費でエンゼルケア費用を設定することができます。
ただし、訪問看護基本療養費の額を基準とし、社会常識上、妥当な金額設定とします。
近隣事業所での金額設定を参考に、大きく差が開かないよう注意しましょう。
あすぴ調べだと、10,000円前後で設定している事業所が多いですね。
事例紹介1
Aさんは、がん末期の診断にて在宅療養を行っています。
週に3回の訪問看護と、2週間に1回の訪問診療で在宅療養を支えています。
訪問看護師からAさんやご家族へ緊急時の対応方法を説明し、Aさんが希望する療養生活に近付けられるようチームでの情報共有を行います。
Aさんは徐々に身体症状の変化が訪れ、寝たきりの状態になりました。
そのタイミングで、訪問看護は週3回から毎日の訪問へ増やしました。
毎日の訪問が開始されて1週間が経過しました。
予定通り、午前中に定期訪問を行った日のことです。
夕方ご家族より、Aさんの呼吸停止の連絡があり訪問看護師が駆けつけ状態の確認を行いました。
呼吸停止の旨を訪問看護から主治医へ報告し、主治医の往診があり死亡診断がされました。
死亡診断の後、訪問看護師はエンゼルケアを実施しました。
問1
Aさんの死亡日、訪問看護での診療報酬はどのようになるでしょうか。
答え
基本療養費、難病等複数回訪問加算、緊急時訪問看護加算、訪問看護ターミナルケア療養費1が算定されます。
死後の処置料金を自費設定している場合には、算定します。
問2
Aさんの死亡日の午前中定期訪問後に、緊急搬送となり病院で死亡確認となった場合に訪問看護ターミナルケア療養費は算定できるでしょうか?
答え
できます。
ターミナルケアを行っていた在宅から出発して24時間以内であれば、搬送中や医療機関での死亡確認となっても訪問看護ターミナルケア療養費は算定できます。
事例紹介2
Bさんは心不全で在宅療養を行っています。
要介護3で、介護保険での訪問看護を行っており、「最期まで自宅で過ごしたい」というBさんの強い希望に沿って訪問診療の導入をしました。
訪問看護は週2回訪問しており、24時間対応は行っていない事業所です。
症状が思わしくなく、治療の甲斐も虚しく在宅で看取りとなりました。
問1
Bさんの死亡日、訪問看護での介護報酬はどのようになるでしょうか。
答え
24時間対応体制がある事業所であれば、ターミナルケア加算を算定できますが、事例の事業所では24時間対応体制を取っていないため算定できません。
訪問をしていれば、通常の訪問料金を算定します。
問2
事業所が24時間対応を行っていた場合で、かつ状態悪化時から特別訪問看護指示書が交付されていた場合には、Bさんの死亡日、訪問看護での診療報酬はどのようになるでしょうか。
答え
特別訪問看護指示書が交付されている期間中は医療保険での訪問に切り替わります。
医療保険での訪問が最終訪問日の場合には、最終訪問日に訪問看護ターミナルケア療養費を算定します。
特別訪問看護指示書の指示期限が終了後に介護保険で訪問している場合には、死亡月にターミナルケア加算を算定します。
最終訪問時の適用保険に注目です。
まとめ
今回は、訪問看護ターミナルケア療養費について解説しました。
「病院に搬送されて亡くなったけど、訪問看護はどうやって加算を算定するの?」という疑問が解決されたでしょうか。
訪問看護の算定要件はややこしいものが多く、知らなければ算定せずに通り過ぎてしまう可能性もあります。
ぜひ在宅看取りを経験した際には、どのような料金が発生しているのか振り返ってみてくださいね。
ウチくる看護では、引き続き訪問看護に関する質問、相談を受付中です。
お問い合わせフォームまたはTwitterのDMからご連絡お待ちしています。
コメント