医療保険での訪問看護の加算を詳しく解説|現場に行く訪問看護師が理解しておくべき加算一覧

こんばんは、あすぴです。

今回は医療保険での訪問看護利用時に発生する加算についてまとめました。

加算って、いろんなルールがあってわかりづらい!
でも管理者や事務さんだけに任せておくのは絶対にNGです。
現場は日々治療の変更があり、取れる加算もその月や週によって変わります。
現場に立つ看護師こそ、加算を理解して取りこぼしのないように管理者や事務さんと協力し合う必要があります。

意外と加算の取りこぼしって多いんです。
取りこぼすのはもったいないです。提供した看護をボランティアにすることと同じです。
しっかりと加算の一つ一つのルールを把握して、自分たちが提供した看護を算定しましょう。

医療保険での訪問看護の概要はこちらの記事を読んでください。

目次

医療保険での訪問看護の加算一覧

医療保険の基本料金に付けられる加算は、こんなにたくさんあります。
そしてそれぞれ算定できる回数や条件が異なります

加算の名前料金(10割/円)自己負担(1割 / 円)自己負担(2割/ 円)自己負担(3割/円)
難病等複数回訪問加算(2回目)4.5004509001.350
難病等複数回訪問加算(3回目)8.0008001.6002.400
24時間対応体制加算6.4006401.2801.920
緊急訪問看護加算2.650270530800
特別管理加算Ⅰ5.0005001.0001,500
特別管理加算Ⅱ2.500250500750
訪問看護情報提供療養費11.500150300450
訪問看護情報提供療養費21.500150300450
訪問看護情報提供療養費31.500150300450
在宅患者緊急時等カンファレンス加算2.000200400600
長時間訪問看護加算5.2005201.0401,560
退院時共同指導加算8.0008001.6002.400
特別管理指導加算2.000200350400
退院支援指導加算6.0006001.2001.800
在宅患者連携指導加算3.000300600900
乳幼児加算1.500150300450
看護・介護職員連携強化加算2.500250500750
複数名訪問看護加算4.5004509001.350
早朝・夜間訪問看護加算2.100210420630
深夜訪問看護加算4.2004208401.260
訪問看護ターミナルケア療養費125.0002.5005.0007.500
訪問看護ターミナルケア療養費210.0001.0002.0003,000

参考資料として、別表7、8を掲載しておきます。
別表7、8に該当するご利用者様のみ算定できる加算もありますので、必要な時には戻ってきて確認してみてください。

厚生労働大臣が定める疾患(別表7)の19疾病と1の状態
  1. 末期の悪性腫瘍
  2. 多発性硬化症
  3. 重症筋無力症
  4. スモン
  5. 筋萎縮性側索硬化症
  6. 脊髄小脳変性症
  7. ハンチントン病
  8. 進行性筋ジストロフィー症
  9. パーキンソン病関連疾患
  10. 多系統萎縮症
  11. プリオン病
  12. 亜急性硬化性全脳炎
  13. ライソゾーム病
  14. 副腎白質ジストロフィー
  15. 脊髄性筋萎縮症
  16. 球脊髄性筋萎縮症
  17. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  18. 後天性免疫不全症候群
  19. 頸髄損傷
  20. 人工呼吸器を使用している状態

厚生労働大臣が定める状態(別表8)
  1. 在宅悪性腫瘍等患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者
    又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者
  2. 以下のいずれかを受けている状態にある者
    • 在宅自己腹膜灌流指導管理
    • 在宅血液透析指導管理
    • 在宅酸素療法指導管理
    • 在宅中心静脈栄養法指導管理
    • 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
    • 在宅自己導尿指導管理
    • 在宅人工呼吸指導管理
    • 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
    • 在宅自己疼痛管理指導管理
    • 在宅肺高血圧症患者指導管理
  3. 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
  4. 真皮を超える褥瘡の状態にある者
  5. 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者(週3回以上の点滴を行う必要のある者)

それではさっそく、加算の詳しいルールを確認していきましょう。

難病等複数回訪問加算

1日に複数回訪問した場合には、2回目に4.500円、3回目に8.000円の加算を算定できます。

別表7、8に該当するご利用者様や、特別訪問看護指示書が交付されている場合には、医療保険での訪問看護の基本ルールである週3回、1日1回まで制限が外れます。
しかし、基本療養費と管理療養費は1日に1回のみの算定です。
そのため、2回目と3回目の訪問はこの加算を算定することができます。

24時間対応体制加算

これは任意での加算になります。ご利用者様に同意を得た上で、月に1回算定できます。
この加算を算定するためには、地方厚生局長に申請が必要です。
24時間連絡を受けられ、必要時には緊急訪問を行います。

1ヶ月のうち、緊急の訪問をしてもしなくても発生する加算です。ご利用者様への説明を十分に行い、同意を得る必要があります。

緊急訪問看護加算

ご利用者様や家族の緊急の求めに応じて、主治医の指示により、看護師等が訪問看護を行った場合に基本料金とともに算定します。
算定できるのは、1日につき1回に限りです。

特別管理加算Ⅰ、Ⅱ

次の表に該当する場合には、特別管理加算Ⅰを算定します。

特別管理加算Ⅰ

  • 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態にあるもの
  • 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にあるもの
  • 気管カニューレを使用している状態にあるもの
  • 留置カテーテル(胃管、腎ろうカテーテル、膀胱留置カテーテルなど)を使用している状態にあるもの

次の表に該当する場合には、特別管理加算Ⅱを算定します。
指導管理については医療機関が管理加算を算定していて、訪問看護師が患者指導を行う必要がある場合には算定できます。

特別管理加算Ⅱ

  • 以下のいずれかを受けている状態にある者
    • 在宅自己腹膜還流指導管理
    • 在宅血液透析指導管理
    • 在宅酸素療法指導管理
    • 在宅中心静脈栄養法指導管理
    • 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
    • 在宅自己導尿管理
    • 在宅人口呼吸指導管理
    • 在宅持続要圧呼吸療法指導管理
    • 在宅自己疼痛管理指導管理
    • 在宅肺高血圧症患者指導管理
  • 人工肛門また人工膀胱を造設している状態
  • 真皮を越える褥瘡の状態
  • 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

特別管理加算Ⅰ、Ⅱともに月に1回算定します。

訪問看護情報提供療養費1、2、3

該当する関係機関からの求めにより情報提供を行った場合に算定できます。
訪問看護情報提供療養費1は市区町村(自治体)、保健所、精神保健福祉センターなど
訪問看護情報提供療養費2は小学校や中学校、特別支援学校など
訪問看護情報提供療養費3は保険医療機関の主治医に情報提供を行った場合に算定します。

この加算は、提供先からの求めにより情報提供を行った場合に算定するものです。
ステーションから一方的に情報提供した場合には算定できませんのでご注意ください。

在宅患者緊急時等カンファレンス加算

利用者の状態急変時や治療方針の変更の際に、在宅医療を担う医師の求めにより、ご利用者様宅に赴き医療関係職種等がカンファレンスを行い、療養上に必要な指導を行った場合に算定します。
月に2回まで算定することができます。
そのため、ケアマネジャーからの求めによるカンファレンス(サービス担当者会議)では算定することができません

また、カンファレンスの内容は看護記録に記載する必要があります。

長時間訪問看護加算

次のようなご利用者様に対する訪問看護で、長時間(90分を超える)訪問の場合に算定します。
ケアの内容が多く、90分以上の訪問が必要な場合に限ります。

特別管理加算を算定している
特別訪問看護指示書が交付されている
15歳未満の超重症児または準超重症児の利用者

この加算は週に1回のみ算定できます。
15歳未満のご利用者様は週に3回まで算定できます。

退院時共同指導加算、特別管理指導加算

退院時共同指導加算は、入院中の退院前カンファレンスや入所中のカンファレンスに参加し、退院後(退所後)の療養生活について入院先や入所先の医師や医療従事者と共同して指導を行った際に算定できる加算です。
複数に分けてカンファレンスが必要だった場合に、2回まで算定可能です。
退院後初回訪問の際にすることができます。

ただし、カンファレンス後1ヶ月以内もしくはカンファレンスの実施月の翌月までしか算定できません
たまに退院直前に状態が変わり、入院が長引く場合がありますが、カンファレンスの翌々月の退院になった場合には算定できませんのでご注意ください。

話し合った内容は文書に残し、退院後の訪問時にご利用者様から署名をいただく必要があります。

特別管理指導加算は、退院時共同指導加算を算定するご利用者様が、特別管理加算の対象だった場合に追加で算定できる加算です。

退院支援指導加算

退院支援指導加算は、退院日に訪問看護を行った場合に算定する加算です。
しかし、算定するには以下の条件に当てはまらなければいけません。

  • 別表7に該当する者
  • 別表8に該当する者
  • 退院日の訪問看護が必要と認められた者

退院日は、入院していた病院の入院期間となるため、訪問看護での算定はできません
その代わりにこの加算を算定します。
退院日当日の算定はできませんので、翌日以降の訪問日に加算として算定します。

在宅患者連携指導加算

ご利用者様の療養について診療情報や経過の共有を医療介護関係職種間で月に2回以上、文書(ファックスやメールで可)を共有し、各職種が診療情報を踏まえて療養上の指導を行った場合に算定します。

わたしの在籍するステーションでは、医療用SNSにて月2回以上、主治医やケアマネジャーなどの他職種と情報提供や相談、指示の変更を行った際に算定しています。
情報提供があった際には、看護記録に記載する必要があります。

この加算を算定できるのは月に1回です。

乳幼児加算

6歳未満のご利用者様に対して訪問看護を実施した場合に算定する加算です。
1日につき1回限り算定できます。

看護・介護職員連携強化加算

この加算は、介護職員等が喀痰吸引等業務を実施している場合に、訪問看護ステーションの看護師が介護職員等の支援を行ったときに算定する加算です。

算定するためには、喀痰吸引等指導研修を受けた看護師が、介護職員への助言や緊急時の対応についての指導、会議などの出席により連携を図る必要があります。
以下の算定条件をクリアする必要があります。

  • 24時間対応体制加算を地方厚生(支)局長に届出をしている。
  • 喀痰吸引等業務を行う介護職員等の支援を行う。 
    • 喀痰吸引等に係る計画書や報告書の作成及び緊急時等の対応についての助言
    • 介護職員等に同行し、利用者の居宅において喀痰吸引等の業務の実施状況について確認
    • 利用者に対する安全なサービス提供体制整備や連携体制確保のための会議に出席した場合
  • 介護職員等と同行訪問を実施した日、または会議に出席した日の属する月の初日の訪問看護の実施日に算定する。

複数名訪問看護加算

複数名訪問看護加算は、以下の条件に当てはまるご利用者様にのみ算定できる加算です。
複数名での訪問看護が必要な場合に、算定します。

  1. 別表7、8に該当する者
  2. 特別訪問看護指示書の交付を受けている者
  3. 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為などが認められる者
  4. 利用者の身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者
  5. その他利用者の状態から判断して、上記のいずれかに準ずると認められる者

この加算の算定には、ご利用者様や家族の同意が必要です。
複数名での訪問が必要な旨を説明し、同意を得てから算定するようにしてください。

また、看護職員とともに同行する職員の職種により料金が異なります
保健師、助産師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の場合は週に1回、4.500円を算定できます。
准看護師の場合も週に1回、3.800円を算定できます。

訪問看護ステーションに雇用されている看護補助者(資格の条件はなし)の同行も可能です。
看護補助者の同行は、通常の医療保険の場合には週3回までの同行で3.000円、別表7、8該当者と特別訪問看護指示書の交付されている場合には訪問制限はなく1日1回の訪問で3.000円、1日2回の訪問で6.000円、1日3回以上の訪問で10.000円が加算されます。
なお、同行する看護師を看護補助者として算定することはできません

早朝・夜間訪問看護加算、深夜訪問看護加算

ご利用者様またはその家族などの求めに応じて夜間早朝深夜に訪問看護を行った場合に算定します。
時間帯によって料金が異なります。
また、1日に1回のみ算定できます。

 早朝   6:00~8:00  2.100円 
 夜間 18:00~22:00 2.100円
 深夜 22:00~6:00 4.200円

この加算は、ご利用者様または家族の求めによって早朝、夜間、深夜の時間帯に訪問する場合に算定することができますので、ステーションの都合で該当の時間での訪問になった場合には算定できません

訪問看護ターミナルケア療養費1、2

在宅で死亡したご利用者様に対し、死亡日及び死亡日前14日間に2回以上計画に基づいてターミナルケアを含む訪問看護を行った場合に算定できます。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の内容を踏まえてACP(アドバンスケアプランニング)を行い対応していく必要があります。
また、算定要件として以下の条件があります。

  • 主治医との連携の下に、訪問看護におけるターミナルケアを計画、実施している。
  • 支援体制(24時間対応体制、緊急時の連絡先など)についてご利用者様及びそのご家族等に対して説明を行い同意を得ている。

ターミナルケア療養費は、2種類あります。

ターミナルケア療養費1は、在宅で死亡したご利用者様が対象となります。
ターミナルケア後、24時間以内に病院や特養などで死亡した場合も算定できます
施設側が看取り介護加算などを算定している場合には、算定できません。

ターミナルケア療養費2は、特養などで死亡したご利用者様が対象となります。
施設側が看取り介護加算などを算定している場合に算定します。

複数の訪問看護ステーションが介入する際の加算の取り方

複数の訪問看護ステーションが介入する場合には、それぞれのステーションで算定できる加算といずれかのステーションのみ算定できる加算があります。

複数のステーションがそれぞれ算定できる加算
  • 特別管理加算
  • 在宅患者緊急時等カンファレンス加算
  • 在宅患者連携指導加算
同一日には算定できない加算
  • 難病等複数回訪問加算
  • 緊急訪問看護加算
  • 複数名訪問看護加算
  • 退院時共同指導加算
  • 乳幼児加算
  • 早朝・夜間訪問看護加算
  • 深夜訪問看護加算
1ヶ月(1週間)に1回、1つのステーションのみが算定できる加算
  • 24時間対応体制加算
  • 訪問看護情報提供療養費
  • 長時間訪問看護加算(1週間に1回)
  • 看護・介護職員連携強化加算
  • 訪問看護ターミナルケア療養費

1つのステーションのみが算定できる加算については、共同して介入するステーション同士でどちらが算定を取るか協議する必要があります
隔週で隔月で算定を取ることが多いです。
緊急時訪問看護加算は1つのステーションのみがオンコール対応を行うこともありました。
いずれもトラブルにならないよう公平な協議を行いましょう

まとめ

加算について一覧にしてみました。
加算は定期的に改定もあり、変更があるたびに意識的に情報取集をしていく必要があります。
変更点があればどんどん追加していこうと思いますので、ぜひチェックしてください。

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参考資料

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この記事を書いた人

総合病院で病棟勤務後、出産を機に訪問看護に転職。
訪問看護初心者であり、子育て真っ盛りの1児の母でありながら管理者に就任。3年半の管理者生活を降任し、現在は訪問看護師として働きながら新たな訪問看護師の仲間を増やすため初心者ブロガーとしても活動中。
お酒とホームパーティが大好きな30代半ばの働くママ。

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