こんにちは!訪問看護師あすぴです。
今日は、こんなお悩み相談をいただきました。
あすぴさーん!
特別管理加算ってどんなご利用者様に算定するのか、よくわかりません…。
そうなんです。
特別管理加算の発生条件は、結構ややこしいんです。
訪問看護の算定では、基本料金と加算があります。
加算とは、条件によって基本料金に加えられるオプションのようなものです。
医療依存度が高く、看護師による特別な医療的管理が必要な場合には「特別管理加算」というものが算定されます。
今回は、特別管理加算を使いこなす徹底解説をしていきたいと思います!
実際に悩んでいる事例も、一緒に考えていきましょう。
よろしくお願いしますっ!
特別管理加算は医療保険、介護保険ともに共通
まずは特別管理加算の概要です。
下記は厚生労働省から出ている診療報酬の一文です。
特別管理加算は、指定訪問看護に関し特別な管理を必要とする利用者に対して指定訪問看護を行うにつき、当該利用者又はその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制その他必要な体制が整備されているものとして地方厚生(支)局長に届け出た訪問看護ステーションにおいて、指定訪問看護を受けようとする者に対して、当該利用者に係る指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に、月1回に限り所定額に加算する。
厚生労働省 令和2年度診療報酬改定について
なるほどー!(よくわかんない…)
つまりどういうことでしょうか…?
難しい文章ですよね〜
つまり、こういうことです。
特別管理加算とは、訪問看護の加算の一つです。
特別な医療的管理が必要な場合に、算定することができるものです。
算定するためには、厚労省で示された条件をクリアする必要があります。
- 24時間緊急時対応ができる事業所として届け出をしていること
- 特別な医療的管理に対し訪問看護指示書への記載がされており、訪問看護計画を立て介入を行っていること
この条件をクリアしている事業所は、特別管理加算を算定できる
特別管理加算は、ⅠとⅡに分類されていて、それぞれ料金が異なります。
また、訪問看護は医療保険と介護保険のいずれかの保険で算定します。
医療・介護保険の理解はこちらの記事へ→訪問看護は医療保険と介護保険で利用することができます!|訪問看護の基礎知識を事例を解いて理解できる
医療保険、介護保険ともに特別管理加算が存在します。
料金設定は以下のようになっています。
医療保険も介護保険も、特別管理加算は同じなんですね!
だいたい同じなんですが、共通しないこともあるので要注意です。
次の項目で解説していきます。
医療保険と介護保険で共通しないこと
医療保険と介護保険で共通しないのは、複数事業所が共同して介入している場合です。
医療保険で介入の場合
医療保険で介入する場合、基本的に1事業所のみが介入を認められています。
しかし、別表7および別表8に該当する場合や特別訪問看護指示書が交付されている場合には、複数事業所の介入が可能となります。
複数事業所の介入ルールについてはこちらの記事を確認→訪問看護がもっと使いやすくなる知識|医療保険で利用する訪問看護
特別管理加算については、複数の事業所が介入していてもそれぞれの事業所で算定することができます。
介護保険で介入の場合
介護保険で介入する場合、ケアプランに計画されていれば介入する事業所数に限りはありません。
しかし、特別管理加算については1事業所のみの算定になります。
2事業所以上で介入する場合、どの事業所が特別管理加算を算定するのか話し合っておく必要があります。
月に1回の算定なので、今月は当事業所で来月は他事業所というように分けることもできます。
医療保険と介護保険で異なることもあるんですね!
よくわかりました。
それでは、特別管理加算の対象者を見てみましょう!
特別管理加算Ⅰとは
特別管理加算Ⅰは、以下の条件に該当する対象者に対して算定できます。
特別管理加算Ⅰ
- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態にあるもの
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にあるもの
- 気管カニューレを使用している状態にあるもの
- 留置カテーテル(胃管、腎ろうカテーテル、膀胱留置カテーテルなど)を使用している状態にあるもの
特別管理加算Ⅰを算定する対象のご利用者様は、より重症度の高いことがわかります。
これら該当する医療的管理に対し、計画的な看護を行う必要があります。
訪問看護計画書に具体的に記載して、看護の実施および評価をしていきましょう。
留置カテーテルについては、一時的な留置では算定できません。
カテーテルを留置している状態を管理することで加算が発生しますので、一時的な留置では加算は取れません。
点滴のサーフローも数日間留置している場合は算定できますが、抜き差しで点滴をする場合には特別管理加算Ⅰは算定できません。
週3日間以上の点滴を行なった場合は、特別管理加算のⅡが算定できます。
在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けているっていうのは、医療用麻薬を使っているってことですか?
もしくはがん末期の人のこと?
あまり聞きなれないですよね。
答えは、いずれもNOです!
まずは、在宅悪性腫瘍等患者指導管理料について、厚生労働省の説明を見てみましょう。
在宅悪性腫瘍等患者指導管理料とは、在宅における鎮痛療法又は悪性腫瘍の化学療法を行っている入院中の患者以外の末期の患者に対して、当該療法に関する指導管理を行った場合に算定する。
厚生労働省 (参考)在宅医療における注射薬に関連する告示及び通知等(抜粋)
「在宅における悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法」とは、末期の悪性腫瘍の患者であって、持続性の疼痛があり鎮痛剤の経口投与では疼痛が改善しないため注射による鎮痛剤注入が必要なもの又は注射による抗悪性腫瘍剤の注入が必要なものが、在宅において自ら実施する鎮痛療法又は化学療法をいう。
在宅悪性腫瘍等患者指導管理料というのは、医療機関が算定する加算です。
経口投与での医療用麻薬では疼痛コントロールが十分でない場合などに、PCAポンプを使用して持続的に医療用麻薬を注射することがあると思います。
そういった注射での鎮痛療法を行う場合に適用される加算です。
そのため、がんでの疼痛コントロールを行っていても経口投与や貼付剤、座薬での医療用麻薬の使用では在宅悪性腫瘍等患者指導管理料は算定できません。
したがって、訪問看護での特別管理加算Ⅰの中の「在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態」には該当しませんので、ご注意ください。
理解できました!
注射でないといけないんですね。
そうです、その通り!素晴らしいです♪
では続いて、特別管理加算Ⅱの対象者を見ていきましょう。
特別管理加算Ⅱとは
特別管理加算Ⅱは、以下の条件に該当する対象者に対して算定できます。
特別管理加算Ⅱ
- 以下のいずれかを受けている状態にある者
- 在宅自己腹膜還流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
- 在宅自己導尿管理
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅持続要圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理
- 人工肛門また人工膀胱を造設している状態
- 真皮を越える褥瘡の状態
- 【医療】在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
【介護】点滴注射を週3回以上行う必要があると認められる者
ストマを造設している場合、カテーテルは留置していませんので特別管理加算Ⅰには該当しません。
また、点滴注射については3回以上実施できなければ算定はできません。
医療と介護で文言が異なりますが、内容は同じです。
特別管理加算Ⅰ、Ⅱともに訪問看護指示書への記載が抜けていることがあります。
訪問看護指示書に記載漏れがある場合には、必ず記載していただくようお願いしましょう。
訪問看護指示書の詳しい記載方法はこちらの記事を確認→訪問看護で100%必要なもの、それは訪問看護指示書です|5種類の訪問看護指示書がまるっとわかる!
わかりました!
算定をとるにも色々条件があるんですね。
そうなんです。ややこしいですよね。
では、実際のご利用者様に合わせて考えてみましょう。
事例1 指導管理を受けているかってどうやって確認するの?
A様、80歳代男性。神経因性膀胱により自己導尿が必要である。
カテーテルを持ち帰り、一時的に自己導尿している。
高齢であり自己導尿における手技の確認や指導の継続が必要であり、訪問看護が介入を行っている。
自己導尿の指導について、訪問看護指示書への記載がされている。
こんなご利用者様がいるんです。
先ほど見た一覧表だと、特別管理加算Ⅱの「在宅自己導尿管理を受けている状態にある者」に当たるとは思うんですけど…
疑問に思うところがありますか?
「在宅自己導尿管理を受けている」って、どうしたらわかるんですか?
このQ&Aを見てみましょう!
Q
算定要件の区分である平成24年厚生労働省告示第95号第6号の『イ』、『ロ』にある『医科診療報酬点数表に掲げる在宅○○指導管理を受けている状態』とは、医療で各指導管理料を算定している状態を指すのか。それとも、医療での報酬算定の有無に関わらず、利用者がそういった状態であれば良いのか。A
東京都福祉保健局 疑義解釈資料(訪問看護)について
医療の算定の有無に関係なく、利用者の状態で判断する。
在宅◯◯指導管理料は、在宅悪性腫瘍等患者指導管理料と同様に医療機関で算定するものです。
特別管理加算は、その算定要件を満たす必要はあります。
しかし、病院側が指導管理料を算定しているかどうかではなく、利用者の状態で判断して良いとされています。
事例にあるA様は、在宅自己導尿管理を受ける算定要件を満たしているため、特別管理加算Ⅱを算定することができます。
わかりました!
病院が算定する診療報酬も調べる必要があるんですね。
インターネットが普及している時代に生まれてよかったですよね〜(笑)
事例2 特別管理加算Ⅰ・Ⅱの両方に該当する場合は?
B様、70歳代女性。真皮を超える褥瘡があり処置のため訪問看護が介入している。
感染症を起こし、抗生剤と補液の点滴治療を行うこととなった。
主治医より、特別訪問看護指示書と在宅患者訪問点滴注射指示書が交付された。
点滴ルートを留置して、1週間治療を行った。
B様は、真皮を超える褥瘡で特別管理加算Ⅱと、点滴のカテーテル留置で特別管理加算Ⅰを算定できますよね!
おっと!それはできません!
特別管理加算は、ⅠとⅡの両方に該当していても、両方を算定することはできません。
ⅠとⅡに該当する場合は、Ⅰのみを算定します。
特別管理加算は月に1回のみ算定する加算です。
もともと特別管理加算Ⅱを算定していたご利用者様が、月の途中で特別管理加算Ⅰに該当する治療が開始されることもあります。
せっかく行った特別な管理が必要な看護ですから、漏らさず算定を取りましょう。
なるほどです−!
特別管理加算、マスターできそうです!
お疲れ様でした!
最後に、わたしが訪問看護の診療報酬、介護報酬を勉強するときに一番わかりやすかった書籍を紹介します。
訪問看護師のための診療報酬&介護報酬のしくみと基本 図解でスイスイわかる 2020〈令和2〉年度改定対応版[本/雑誌] / 清崎由美子/編著 宮崎和加子/編著 価格:2,750円 |
訪問看護の保険算定を勉強したいと思ったら最初に開くといいテキストです。
今でも困ったときに見返すのは、この本が多いです。
この本で基礎が理解できると、Q&Aを使いこなすことができますよ!
ありがとうございます!
早速読んでみます♪
まとめ
- 特別管理加算は、事業所の届出が必要である。
- 医療保険は複数事業所で算定可能、介護保険はいずれかの事業所のみ算定可能。
- 在宅◯◯指導管理料を受けている状態かは調べる必要がある。
- 特別管理加算ⅠとⅡ、両方を算定することはできない。
今回は特別管理加算ⅠとⅡについて解説しました。
特別管理加算は毎月確認することで算定もれを予防できる加算です。
ぜひわからなくなったらその都度調べて、正しく看護を料金化してくださいね!
それでは引き続き、訪問看護ライフを楽しみましょう♪
算定や訪問看護業務など、twitterのDMまたは問い合わせからご相談受付中です。
お気軽にどうぞ!
参考
厚生労働省 令和2年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00027.html
労働省 (参考)在宅医療における注射薬に関連する告示及び通知等(抜粋)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000207738.pdf
東京都福祉保健局 疑義解釈資料(訪問看護)について
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/4_houkan.files/houkan_pa.pdf
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