こんにちは、あすぴです。
訪問看護師は、入院中に開催される退院前カンファレンスに参加することがあります。
退院前カンファレンスでは、大勢の病院関係者や地域のサービス関係者、時には市区町村の関係者も出席する場合もあり、とても緊張します。
積極的に発言するのは苦手…という看護師さんもいますよね。
しかし、退院した日から患者様の在宅生活は始まります。
退院してきてから様々な問題が発生するのは仕方がないことです。
そういう時のために訪問看護師が役に立ちます。
確認すべき内容は事前に確認しておけば、より安心して在宅生活を再開できます。
わたしもよくカンファレンスが終わった後に、「あれを聞いておけばよかった〜!」とか、「これも確認するんだった…。」と後悔することもしばしばありました。
でも、記事にまとめた項目の視点で情報収集するようにしてからは、より具体的に在宅生活を想像することができるようになりました!
その結果、患者様だけでなく退院直後に関わるわたしたち訪問看護師も安心してサービスを提供することができるようになったのです。
ぜひ、この記事をお読みいただいて退院前カンファレンスに臨んでみてください。
退院はわたしたち在宅医療・福祉介護関係者にとってはスタートの合図です。
患者様と、患者様を取り巻く在宅チームがいいスタートを切ることができることを応援しています!
まずは病状の把握をする
まずは、入院に至った経過や入院中に行われた治療を確認します。
この項目については退院前カンファレンスの最初に医師から説明されることが多いです。
治療の経過で起こった体調変化やトラブルなどを詳しく伺えると、自宅に戻ってからも注意して観察することができます。
その変化に対して行った治療や対処方法についても確認しておくといいですね。
例えば疾患により苦痛症状が出現した際に、病院では点滴で対応したとします。
在宅で点滴を行うこともできますが、自宅で管理するには内服薬や座薬が望ましいでしょう。
現在行っている治療を在宅に置き換えた時に、わたしたち訪問看護師や家族が対応しやすい方法を提案して指示してもらえると実用的です。
継続が必要な治療を確認する
自宅退院になっても、治療が継続して必要となる場合がほとんどです。
治療によって物品が必要となる場合もありますので、どのような状態でお帰りになるのか確認しておきましょう。
点滴の継続が必要な場合
点滴の薬剤と訪問看護指示書を合わせてお持ち帰りいただく必要があります。
点滴を自宅で行う場合、週に3日以上の点滴が必要であれば「訪問看護指示書」に加えて「在宅患者訪問点滴指示書」が必要です。
点滴の滴下速度など、在宅で管理可能な内容にしていただけるようお伝えしておくことも大事です。
訪問看護のルールはあまり病院などの医療機関に知られていません。
なので、退院前カンファレンスに参加した訪問看護師がルールに沿って可能な方法を提示する必要があります。
また、点滴の薬剤と合わせて、点滴の物品もお持ち帰りいただくようお伝えします。
三方活栓は持ち帰っているけど、ロック用のシュアプラグがない!
翼状針のみ持ち帰っているけど、認知症があり動いてしまうためサーフローの方がいいかも。
など、在宅に戻ってから物品を請求しても遅いです。
ステーションにいくつか物品をストックしている場合もありますが、退院前カンファレンスに参加できるのであれば病院職員と必要物品の確認をしておくとスムーズですね。
中心静脈栄養が必要な場合
中心静脈栄養の場合は、「訪問看護指示書」の点滴の記載欄に指示を記載していただきます。
中心静脈栄養の場合には、点滴ルートがフィルター付きのものになります。
通常、週に1回交換します。
在宅用の輸液ポンプを使用する場合には、輸液ポンプ用のルートが必要になることもあります。
また、針やルートは少し余分にお持ち帰りいただけると、ルートトラブルがあった際に対応ができます。
点滴の更新を家族が行う場合もありますが、更新時間がずれてしまいルートにエアが混入してしまった、ということもあり得ます。
トラブルがあると最低数だけでは不足してしまうこともありますので、念のために1セット多く入れていただくようお願いしてみるといいと思います。
創傷処置や褥瘡処置が必要な場合
処置方法の具体的な内容を聞いておきましょう。
処置の際の注意点や、受診の目安などもあれば教えていただけるとありがたいです。
処置に使う外用薬も退院時処方に入れていただくようお伝えします。
訪問看護指示書にも処置内容な記載してもらいましょう。
真皮を超える褥瘡の場合、「特別訪問看護指示書」が月に2枚まで交付可能で、介護保険より医療保険を優先して訪問することができます。
必要時には特別訪問看護指示書の依頼も行いましょう。
また、使用物品の準備は基本的には病院が処方することになっています。
しかし、病院によっては一部は患者様自身が用意するものもあります。
処置物品を患者様やご家族が準備する必要がある場合には、どのようなところで入手できるか情報提供を行います。
人工呼吸器が必要な場合
気管カニューレを挿入しての人工呼吸器が必要な場合、自宅での設置場所を確認しておくといいです。
自宅到着直後に吸引が必要となることが多く、介護しやすい導線の確認は有効です。
事前にメーカー担当者が配置を確認してくれていることもあります。
退院日から人工呼吸器のトラブルの可能性はあります。
アラームがなった際の対応方法、アンビューバッグの使用方法、吸引の手技獲得状況など、ご家族への指導はどこまで進んでいるか確認します。
また、人工呼吸器のメーカーに、機械トラブル時の連絡先を確認しておきましょう。
だいたい在宅用の人工呼吸器本体のそばに電話番号が記載してありますが、いざというときには慌ててしまうので、わたしはあらかじめどこに記載されているか聞いておきます。
もし退院前カンファレンスにメーカー担当者が欠席の場合は、退院前に一度連絡をしておくと連携が図れます。
今まで使用したことのない機械の場合は、メーカーの方に退院前に勉強会をしていただくこともあります。
また、吸引が必要な場合がほとんどだと思いますが、吸引のセッティングをどうするか、物品の入手はどうするのかをご家族と確認しておきます。
退院日に人工呼吸器や吸引器のセッティングの必要があれば、退院時間に合わせて訪問することもあります。
在宅酸素療法が必要な場合
在宅酸素療法が必要な場合も、人工呼吸器を使用する方と同様にメーカーへの問い合わせ先を確認しておきます。
メーカーによって操作方法がそれぞれあるため、酸素流量のロック解除方法がある場合やフィルターの位置など確認できると助かります。
パンフレットなどで確認できるといいですね。
また、酸素飽和度が低下するパターンが入院生活の中である場合には情報収集しておきます。
酸素飽和度が低下する場合に上げてもいい酸素量の範囲があれば指示書に記載をしてもらいます。
膀胱留置カテーテルの留置が必要な場合
膀胱留置カテーテルを留置している場合、病院での尿量や尿性状を確認しておきます。
また、飲水や食事摂取の状況や、嚥下状態の情報も聴取しておくと、自宅に戻ってからの変化を評価できます。
また、尿破棄の手順や尿の性状の確認方法など、患者様やご家族が習得されているかも確認しておく必要があります。
入院中と退院後で手技手順の違いがあると、患者様やご家族は混乱します。
具体的にどのように認識しているか、または指導したかを聴取しておくと、退院後のケアも統一が図れます。
膀胱留置カテーテルを留置して退院する場合には、1セットは自宅に置いていただくようにしています。
緊急時には訪問看護師が入れ替え可能であるか確認しておきます。
腎ろうカテーテル、膀胱ろうカテーテルが留置されている場合
腎ろうカテーテルや膀胱ろうカテーテルが留置されている場合も、尿量や尿性状を確認しておきます。
また、腎ろうカテーテルは刺入部付近を縫合してあるため、何針で止めているかも確認します。
尿破棄の方法の指導内容とずれが生じないよう、指導内容の確認も併せて行いましょう。
刺入部の固定のための物品なども事前に確認し、持ち帰りの物品を依頼します。
固定テープでの皮膚の発赤が生じている場合には、皮膚への外用薬の有無も併せて確認します。
人工肛門、人工膀胱が造設されている場合
ストーマを造設している場合には、ストーマの装具の処置の方法や皮膚の状態、排泄物の状態を情報収集します。
ストーマの使用物品は注文方法が決まっている場合には、注文先についても確認しておきます。
装具の貼付や排泄物の破棄は患者様本人が行うのか、家族が行うのか、また手技の獲得はどこまで進んでいるのかを聴取します。
場合によっては自宅で継続指導が必要となることもあり、統一した指導を行えるよう準備します。
ストーマ外来などで継続して経過を見てもらえることもありますので、ご担当されるWOCナースとの連絡手段も確認しておくと安心です。
胃ろう造設または胃管が留置されている場合
胃内の減圧や経管栄養のために経鼻胃管が留置されていたり胃ろうが造設されている場合もあります。入院中の抜去やつまりのトラブルがなかったか、確認します。
内服薬の形状や、服薬の注入物品はどのようなものを使用しているか聞いてみます。在宅で家族が薬の注入を行う場合には、家族指導の状況によって家族が取り扱いしやすい形態(病院では看護師がすりつぶしていたが、退院時処方では粉薬に変更可能か)などを相談します。
どのような規格のものが何センチメートルで留置されているか、確認します。
経鼻胃管は嘔吐などで抜けやすいため、看護師による再留置が可能か確認します。
併せて物品も持ち帰っていただくようお伝えします。
胃ろうの場合は、次回の交換をいつどこで行うのか聞いておきます。
内服薬の処方について
前の項目でも出てきましたが、内服薬は極力シンプルに取り扱える方が飲み忘れもなく治療の継続が可能です。
とくに認知症のある方や、独居の方の場合は飲むタイミングをまとめられると助かります。
多少時間がずれても飲み忘れがないように、朝一回にまとめられると生活がしやすいと思います。
病院では毎回看護師が確認して薬を飲ませてくれていても、自宅に戻るとそうはいきません。
自宅では患者様が忘れずに飲む、もしくはご家族が忘れずに飲ませる必要が出てきます。
家での介護負担軽減のためにも、内服薬の内容やタイミングの見直しは重要です。
自宅に戻ってやっぱり飲めないとならないように、自宅で管理することを想定して退院前カンファレンスの際に相談してみましょう。
また、医療用麻薬など使用している場合は、副作用の有無やそれに対する頓服の処方なども確認しておくとよいでしょう。
在宅での服薬管理についてはこちらの記事も参考にしてください。
ADLから生活に必要なケアを抽出する
退院後は、治療の継続だけでなく、生活が始まります。
そこで重要になるのがADLです。
食事、排泄、清潔、移動、休息など、生活するために必要な動作は様々です。
リハビリが介入している場合には、移動動作や生活動作がどの程度まで可能であるのか聴取します。
また、効果的な介助方法や家族の状態に合わせた介護指導についても聞けるといいですね。
病棟看護師からは、入院中にはどのように療養生活を行っていたのか、確認しておきます。
そして、退院後には自宅の環境でどのように生活をしていくか想定しておく必要があります。
生活面で、介助が必要だったり福祉用具の導入が必要な動作はないか検討しましょう。
特に重要なのが、食事と排泄です。
自宅に戻ったときから生活が始まりますので、少なくとも訪問看護師や他サービスが介入するまで必要となる内容は細かく確認しておく必要があります。
例えば入院中にペースト食を食べていた患者様の場合は、自宅に戻ってどのような食事を用意するのか、もしくはレトルトの介護食や宅配弁当を利用するのかを考えておきます。
また、トイレまでの移動を車椅子で行っていた患者様の場合は、自宅内は車椅子での移動にするのか、環境的に車椅子が難しいのであればポータブルトイレやおむつを使用していくのかを考えます。
退院した日から安全に過ごすことができるよう、自宅内の環境に合った生活について話し合っておきましょう。
現在はコロナウィルス感染予防のため面会制限がある病院がほとんどです。
そのため、家族指導が十分にできずに退院となることもあります。
下の記事は、退院直後から介入した家族指導の事例ですので参考にしてください。
家族の状況を確認する
在宅に戻って生活する場合、ご家族の協力体制も重要な情報のひとつです。
ご家族は同居なのか、もしくは別居なのか、キーパーソンとなる方や協力の頻度も確認しておきます。
ご家族が全ての介護を担う必要はありません。
ご家族にもそれぞれ生活があり、生活を維持しながら介護を継続していくためにはどうしたらいいか、一緒に考えます。
他者からどのくらいの支援を必要と考えているのかを聴取し、それに合った訪問頻度や内容を提示します。
今後の受診予定や緊急時の対応を決めておく
退院後の受診の予定も聴取しておきます。
退院後は他院に受診することもありますので、退院後どのくらいの期間を経て次の医療機関にかかるか確認します。
訪問看護では訪問看護指示書を記載できるのは1人の主治医のみです。
他院に受診するのであれば、その医療機関に訪問看護指示書の記載を依頼をする必要があるかもしれません。
また、緊急時の対応についても医療機関に確認しておく必要があります。
緊急時の対応窓口が救急外来の場合もあれば、地域連携室に連絡することもあります。
医療機関によって対応が異なりますので、聞いておくとスムーズに連絡ができます。
患者様とご家族の思いを聴取する
退院前カンファレンスで患者様やご家族にお会いした際に、在宅生活の希望や心配についても聴取しておきます。
「家に帰ったら、どんなことがしたいですか?」
「家へ帰ってからの生活で、心配に思うことはありますか?」
わたしはこのような質問をします。
聞くタイミングも、カンファレンスが終わって、帰りの挨拶をする際に合わせて伺うことが多いです。
カンファレンスの際に聞くこともありますが、大勢の医療職の前で上記のような質問に答えるのは恥ずかしいという方もいると思いますので、聞くタイミングには十分配慮しましょう。
そして、事業所の連絡先がわかる名刺やパンフレットをお渡しします。
「帰ってくるまでに心配なことがあれば、いつでもご連絡ください。」
とお伝えもしておきます。
訪問看護指示書の手配をしておく
退院前カンファレンスの際には訪問看護指示書の手配もしておきます。
依頼書を作成してお持ちすることもあります。
退院日の基本料金の算定は基本的にはできません。
しかし、退院直後からトラブルは生じる可能性があります。
退院日にも必要時には対応できるよう、退院日からの指示書をもらっておくといざという時にはスムーズです。
下の記事は訪問看護指示書についてまとめてあります。
指示書の種類や記載方法など確認しておきましょう。
退院日と退院時の移動方法、初回訪問日を確認しておく
退院時にどのように帰宅するのか、確認しておきます。
自家用車で帰宅する際など、自宅に入るまでに介助が必要な場合には、具体的にどのように介助するのか聴取します。
必要があれば自宅到着時間に合わせて訪問することもあります。
特別管理加算の算定対象の患者様であれば、退院支援指導加算を算定することができます。
退院日に訪問をしない場合には、訪問看護師が初回訪問で伺う日を患者様およびご家族と共有しておきます。
初回訪問までの間、質問や相談が受けられるよう事業所の連絡先も合わせてお伝えしておきます。
訪問看護の加算の詳細はこちらの記事も合わせてお読みください。
他サービスの利用を確認する
訪問看護以外にも、他のサービスを利用することも多いです。
どのようなサービスが介入するのか確認し、退院後のサービス間の連携が図れるようにしておきます。
訪問介護やデイサービス、ショートステイなどのサービスを訪問看護の初回訪問前に利用する場合もあります。
そのようなサービスの利用時に医療的な面で困ったことがあれば、ご連絡いただくようケアマネジャー担当者にお伝えします。
まとめ
- 医療処置を継続して在宅で行う際には、物品についても確認する。
- 食事水分、排泄の方法を確立しておく。
- ご家族の考え方を聴取し、訪問頻度やケア内容を検討する。
- 退院日、必要な際には自宅到着に合わせて訪問を計画する。
今回は、退院前カンファレンスについてお伝えしました。
退院前カンファレンスでは訪問看護を利用する患者様との初対面となることが多いです。
退院後の生活が安心して始められるようしっかりと準備しておきましょう。
また、なかなか顔を合わせる機会の少ない医師や医療相談員、退院支援看護師の方々との直接お会いできる機会でもあります。
この機会を有効に活用し、今後の連携をより強めてきてください!
名刺を忘れずに!(わたしがよく忘れるんです…)
最後までお読みいただきありがとうございました。
引き続き訪問看護師ライフを楽しみましょう🎵
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